障害者の労働環境、書店との相性がいいワケ

 パラリンピック開幕を1年後に控え、共生社会のあり方が問われるなか、障害者が活躍できる職場づくりに力を注ぐ書店が増えている。古書のネット流通、店舗での接客…。一人一人の特性を踏まえ、力を引き出す店主たちの配慮は他業種のダイバーシティ実現にも役立つヒントとなりそうだ。(文化部 篠原那美)

■雇用生むネット流通

 JR武蔵境駅(東京都武蔵野市)から徒歩5分。通りに面したビル1階に店舗を構える「古書マージナル」。アマゾンやヤフーオークションで古書を販売する同店は、障害者雇用を目的に設立された書店だ。長年福祉の現場を歩んできた直志浩仁さん(55)が立ち上げた。

 同店の特徴は、直志さんが経営する障害者就労支援施設「カバーヌ」と連携していること。本のクリーニングやパソコンでの出品、受注、梱包(こんぽう)や発送、在庫管理などネット古書販売に関わる作業は、精神障害や発達障害などを抱える「カバーヌ」利用者の自立に向けたトレーニングにもなっている。

 利用者は自分が得意とする作業を担当する。直志さんは作業を習熟すれば「マージナル」の従業員として迎え、就労支援施設の工賃よりも高い時給で雇うことを目指している。

 事務作業は苦手だが、人とのコミュニケーションは苦にならないという発達障害の男性(45)は「マージナル」で古書の買い取りを一任されている。「得意分野を任せてもらい充実感がある」と話す。

 「購入者から『きれいに梱包されていました』とネットに評価が書き込まれることも多く、障害のある人も社会とのつながりや、やりがいを実感できる」と直志さん。体調に合わせて勤務時間を柔軟に決めたり、音に敏感な人のために作業場に囲いを作ったりするなど環境作りにも気を配る。

■ジョブ型雇用とマッチ

 近年、ネット古書店で障害者が働くケースが増えている。その背景について、障害者の社会参画に詳しい東京大学先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授は、「ネット古書店の仕事が、障害者雇用に適した『ジョブ型雇用』にマッチするからではないか」と語る。

 ジョブ型雇用は職務内容や報酬をあらかじめ明確に決め、最適な人材を起用する雇用の仕方だ。近藤准教授によると、障害者の中には、自分が得意とする業務に限ったり、短時間であったりすれば、力を発揮できる人々も多いという。

 「ネット古書販売の業務は梱包などの単純作業から、パソコンを用いる事務作業まで多岐にわたり、負荷の程度も幅広い。業務を明確にしやすく、障害者も自分の特性に合った仕事を選ぶことができる。インターネット通販はビジネスとしても伸びており、障害者雇用の好事例として広がりつつあるのではないか」と話す。

■健常者とともに

 一方、接客を伴う書店でも障害者が活躍している。

 東北地方に4店舗を構える「スクラム」は、イオングループの特例子会社「アビリティーズジャスコ」が運営するCD・DVD・書籍販売の専門店。健常者のスタッフとともに、身体、精神あわせ計15人の障害者が働いている。

 同社営業教育部長の川野孝志さん(52)は「大型スーパーではさまざまな品を扱うが、家電や化粧品ほど商品説明を必要とせず、きれいに陳列することで成り立つ書籍販売は障害者にとって働きやすい職場の一つ」と説明する。

 発達障害の20代男性はレジ業務を担当。川野さんは「ともに働く健常者のスタッフが障害の特性を理解し、接客中に障害者が一人で対処できなくなれば、すぐにフォローする態勢が整ってる。障害者もトラブルを一人で抱えずに安心して仕事を引き継いでくれる」と話す。

 障害者が活躍できる職場づくりが求められる中、川野さんは、企業と障害者の相互理解が重要と語る。

 「企業が障害者に寄り添うことはもちろんだが、障害者も自分の成育歴や症状が出やすい場面など、障害に関する情報を企業と共有することで、ともに働きやすい職場づくりができる」と話す。

■VRで業務体験も

 発達障害者が利用する施設では、最新技術を用いた就労訓練が行われてる。

 仮想現実(VR)コンテンツ開発を行うジョリーグッド(東京都中央区)は今夏、発達障害者がVRで仕事を体験できるサービスをスタート。第一弾として「書店の接客体験」が配信された。

 VRを装着すると、レジの内側から見える書店の景色が広がる。ドラマ仕立ての映像が流れ、来店した客から本を探してほしいと要望を受けたり、トラブルに直面したり、書店で働くイメージをつかみやすい。

 ジョリーグッド担当者は他業種のコンテンツも増やし「発達障害者の職業選択の一助にしてもらいたい」としている。【図】障害者への合理的配慮とは

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  • kxssc*****

    閉店してしまった本屋さんにダウン症の店員さんいたけど、一生懸命で仕事はとても丁寧で感じの良い青年だった。今もどこかで頑張って働いてくれるといいなぁと思う。

    • heqjd*****

      ちょ、こんなとこで泣かされそうになったわ。

    • gbbwa*****

      社会全体でこのように暖かい目で見るようにしたいものですね。

  • xifzh*****

    >雇用生むネット流通障害者の適性と、職務内容のマッチングは重要だと思う。加えて、コロナ禍で在宅勤務が促進され一般化された。職種開発による障害者雇用の新しい可能性も出てきた。障害者の新しい労働環境ということでいえば、20h/w以上の雇用関係を通勤の必要性を最小化した在宅勤務で締結するというチャレンジは、もっと積極的に行われていいと思う。

    • tbc*****

      障害者を差別する事は最低行為。

    • qji*****

      本の場所聞くと無言で指差す店員も、そういう雇用なのかな。怒鳴って申し訳なかったな…本当に…なんてことを。

    • hwe*****

      マスクのおかげで、笑顔が気持ち悪いとか笑顔ができないとかで差別されることがなくなったのは、大きな変化だと思う。

    • psye*****

      適性が合えば、とびっきりの能力を発揮するただ、なかなかその適性に合う職場と巡り会えない…

    • lde*****

      その後仕事を継続して続けられるかどうかが本質な問題と20年程前はサラ金関係の雇用募集が多かったと記憶している

    • soz*****

      書店をクローズアップするより。地方に住んでいていつも思う。市区町村の公務員が働く役所や図書館など。必ず駐車場があり。建物は必ずバリアフリー。トイレもバリアフリーがある。バリアフリーの建物や職場は地方でも都会でも少ないと思う。車椅子だから手足が、言葉がそういうのが関係ない仕事は市区町村の職場でたくさんあると思う。一昔前と違いもう一太郎ではなくワードエクセルなんだから若い人でも問題なくやれるはずで。能力のない国民に優しくない高学歴すぎるだけの普通の方より〔昔の公務員は偉いと思って勘違いされてる高年齢で高収入の方を再就職や退職延ばすより〕障害者でも能力のある優しい人の方が良いので法律どうりの人数になるように中途採用新卒も含めて働いていただける方がありがたい。まずは公務員の採用から考えるのが先ではないでしょうか?

  • pgl*****

    何をもって障害かというと、必ず社会の存在が前提になってくる。変な例えだけど、例えば腕が三本生えている人がいたとして、それが障害となるか能力となるかはそれを見る社会次第。受け口の広い社会を作ることは、障害者が助かるということにとどまらず、何が障害かということすら変えていく。また、まだ一般的には障害という言葉は使われないけれど、生きづらさを抱える特性を持つ人は多く存在する。そのような人たちはある意味一番苦しいかもしれない。社会的に認知されているから理解してみよう、というずれた人たちは多い。

    • wzubw*****

      winwinの関係ができるなら一番いい。こうした業務は掘り起こせばもっとありそう。施設や設備のバリアフリーも進めばよい。そして周囲の意識向上。私が以前いた職場に車いすの方が1人いたが、周囲の皆さんは仕事面は勿論、飲み会の場所も当たり前に車いすでも支障のない場所を選んでたし、仕事に対しても差別なく、厳しくすべきところは厳しく、配慮すべきところは配慮していた。ソフト(業務内容)+ハード(施設・設備)+モラル(周囲の意識)の三点セットさえ揃えば障がい者にとって働きやすい環境になるのではと思う。それ以上は不要かなと。本人もそれ以上のことは求めていなかった。

      • flcl*****

        利益の薄い書店は安い障害者雇用がピッタリですね。

      • zhvrl*****

        適材適所で適した職場があれば健常者より能力を発揮できることもあると思うこの記事の仕事内容だと一部の障害者しか該当しないけど、いろんな特性の障害を生かせる仕事を企業が探し出して雇用促進になるといいと思う

    • toy*****

      障害者と病名が付かないほどの障害を持っている方もいる。適切な労働環境を探したりまわりがうまく適正に合わせた労働環境を作れないか試行錯誤することも大切かもしれない。

      • rap*****

        大事ですね。人の能力や適性は本当にバラバラだから、個人個人がパフォーマンスを発揮しやすい環境を作る事は社会を強くしていくと思います。

    • xnm*****

      アマゾンやヤフーオークションで古書を販売するお店は、万引きの心配がないのと、発送までワンテンポおけるので、発達障害者には確かに向いている。総合的判断とか臨機応変な対応が余り必要なく、得意分野に限られた職務内容ならば、彼等の能力が遺憾なく発揮される。

      • yew*****

        仕事を明確化されていて、ある特定の自分の能力が発揮できる分野なら、もはやいわゆる障害者の方が、比較対象とされるいわゆる健常者よりスキルが高い場合も多いはず。特に発達障害の場合は、ある分野での能力が高く、他の分野での適性が平均以下の場合が少なくないと聞く。会社の仕事の割り振りの仕組みとその達成度合いの作り込みを上手くやれば、いわゆる障害者の給与が高くなる場合があっても不思議ではないと思う。なるべくなら、各自の能力が広く発揮出来る仕組みになっていけば良いと思うし、自分ができる事が有ればそうしていきたいと思う。