排便を失敗、食事とらない最愛の妻 その顔を「手がしびれるぐらい」たたき死なした夫 自宅介護9年半、抱え込んだ孤独

〈人間スクランブル かごしま法廷傍聴記〉

【写真】男は周囲の助けをほとんど借りず、9年半にわたり単身介護を続けた(写真と記事は関係ありません)

 「妻に対しては本当に申し訳なかったと思う」

 傷害致死の罪に問われた60代後半の男は、裁判長から最後に言っておきたいことがないかを尋ねられ、謝罪の言葉を口にした。上下黒のスーツ姿。裁判所から補聴器を借りて連日の公判に臨んだ。

 男は2010年から、右半身不随で寝たきりの妻を自宅で単身介護。19年7月、そんな妻が思うように食事を取らないことに腹を立て、顔を平手で複数回たたいて死なせた。「自分の手がしびれるくらいの強さ。死ぬとは思ってなかった」と語った。

 中学卒業後、就職と進学のため大阪へ。17歳のころ、1歳年上の妻と職場で出会った。美しい容姿に引かれ、交際を始めたときは「天にも昇る気持ち」だった。20歳で結婚し、長男が誕生。その2年後、家族3人で故郷に戻った。

 それから35年がたった09年、妻が脳梗塞で倒れた。「1人での生活は耐えられない」。病院から施設に預けることを勧められたが、トラック運転手の仕事を辞めて介護に専念することを決意した。過去にギャンブルで数百万円を借金し、「迷惑を掛けてきた」との思いもあった。 介護施設の通所リハビリを週3回利用。それ以外の時間は、妻の食事や排便など日常生活のほぼ全てを1人で世話してきた。献身的に介護を続けてきたが次第に疲れも出始め、12年ごろから短期入所(3泊4日)も月2回ほど利用するようになった。

 そのころ、介護施設の職員が妻の体に不自然なあざを確認。連絡を受けたケアマネジャーらは度々注意した。16、17年ごろには頻繁にあざが見つかり、関係者らが対応を協議したこともあった。それでも男は「妻と離れて暮らすことに耐えられない」と、自ら介護することを望んだ。

 「介護そのものは好きだった。便以外は―」。男は被告人質問で排便の世話の苦労を繰り返した。食事後などにポータブルトイレに座らせても思い通りにいかず、ベッドを汚してしまうことが多々あった。「妻が自分でコントロールできないと分かっているが、瞬間的に手が出てしまう」

 そして19年7月中旬の朝。男は昨晩に続き、食べ物を口に詰め込んだ妻を2、3発たたいた。その後、顔なじみの常連客らに会うため近くのパチンコ店へ出掛けた。夜に帰宅すると妻の意識がなくなっており、10分ほどで心臓の鼓動が止まった。「ごめんね。またやってしまった…」。ベッドの傍らで語り掛けた。消防への通報は翌日未明になってからだった。 「9年半にわたり懸命に介護をする中、被害者の行為にストレスを募らせ、犯行に至った点は同情の余地がある」。裁判員らはそんな男に対し、実刑ではなく執行猶予付きの判決を選択。社会で更生すべきと判断した。

 裁判長は最後に、審理を担当した裁判官や裁判員のメッセージを読み上げた。「自分の介護の負担を減らせば、このような結果にならなかった。素直に他人に頼ることも考えてほしい」

 男は警察に逮捕されて以来、5カ月ぶりに最愛の妻と過ごした自宅に戻ることになった。「ありがとうございます」と頭を下げ、法廷から去って行った。

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  • lfkhr*****

    長期の介護は一人でできるものではないは当然として、これ介護疲れに見せかけているが、DVする奴と言動一緒。奥さんが健康でも暴力ふるったり女を自分の所有物扱いして気にくわなければ激高し、その後は優しくしたり反省の言葉を述べて相手を引き留めてようとしてたのでは?旦那は自分が孤独になるのが嫌で誰かに執着してただけ。こんな旦那から逃れることもできず、暴力の果てに殺された奥さんが不憫。周りも問題に気づいていたが、こういった被害者を救済する制度が社会にないからどうしようもなかった。殺された奥さんが一番孤独だったと思う。

    • klxyx*****

      同感です。殴っておいてすぐ謝るところとか、まさに。

    • isbbd*****

      自分も介護が必要な母親が居る。食事や排泄補助で思ったとおりに動かないと思わず叩きたくなる気持ちは湧き上がる。さすがに殴ったりはしないが感情的になる気持ちはよくわかる。おそらく自分も紙一重だと思う。なんにも知らんくせに知った風なこと言わない方がいい。

    • oyos*****

      同感です。ひとりになるのが耐えられないのではなく、暴力をふるう捌け口が必要だったのでしょう。過去に数百万円も借金して反省しているようなことを言いながらパチンコをやめてなかったようですし。

  • zfytr*****

    奥様の体は脳梗塞による半身不随でも、認知症などではないから意思は鮮明にはっきりあられたはず。奥様の心を思うと可哀想で仕方ない。奥様は悲しさで亡くなったと思う。旦那に対して全く同情できない。

    • mhxtr*****

      あなたはご立派だと思いますが、それを標準とすることに違和感あります。

    • kxnm*****

      こんなに立派な方がそろっている日本は立派な介護大国になれますね。

    • gqkro*****

      それぞれ状態も環境も違うと考え方もそれぞれで自分が正解とは思っていませんが、介護は自分のためにやっていると思っています。介護されることに申し訳なさや、不自由な自分に絶望している当人の気持ちを思うと自分がなんとかしてあげたいのです。もし手を挙げてしまうぐらいなら、他の手を借りたいと思っています。

    • zcdq*****

      現在もしています。家族が38歳で脳梗塞を起こして同じ状態なので。また、祖父母を20年介護していました。

    • seqfu*****

      脳梗塞でも場合によっては2~3年で認知症が進み、意志疎通が難しくなります。私の母は脳梗塞で倒れて4年で私のことがわからなくなりました。

  • bqj*****

    要介護5の義父の介護をしていますが、おむつ交換や体位交換などは、プロにお願いするのが結局本人の負担が減ります。だいぶ痩せてしまいましたが、やっぱりいっぱしの男性なので、私たち素人が着替えやら何やらさせるのは本当に大変です。素人の私たち家族ができることは、家族にしかできないことは、話をしたり、一緒にテレビを観たり、手を握ってあげたり、そういうことなのではないかと思います。この記事を読んで、この方は介護=身の周りの世話をすること、と固執してしまったのではないのかなという印象を受けました。

    • ikh*****

      介護を頑張っていたとは思いますが、パチンコへ長時間行っている間は、奥さんはどうしていたのでしょうか?この日だけでは、ないのでは?アザを見付けていたのだから、虐待ですよね?その辺は、同情できませんね。ケアマネなどの意見も、聞く事は大事ですね。結果が、殺人になってしまったら、悲しすぎますね。

      • vdzfg*****

        惚れ込まれて結婚しても、ギャンブルで借金か。なんなの。

      • stqg*****

        介護2年目からアザ?朝口に食べ物詰め込んだ不随の女性を平手打ちして夜までパチンコ?意識が無いことに気づいても、心臓止まっても通報は翌朝。記事の内容読んで思ったのは、突発的な感情の爆発でも、事故でもなく、とっくに、どうにもいかなく破綻してた介護生活なのに改善もせず、虐待で死なせたようなものだと思ったが。これで9年以上だから?「献身的な介護」といわれて、まぁそれはそれで自分は疑問だが、世間的に間違ってないのだとしても、これで執行猶予になるのか。加害者にしたらウハウハ楽勝な話だと思った。

      • ospm*****

        わがままですよね。相談しても断られた、助けてくれる人がいないとかでもなく、周囲から勧められていたのに。施設に入れて、自分が会いに行くって方法だってあったのに。自分の気持ちだけを最優先して「ごめんね。またやってしまった…」って何だよって思う。

    • xkdpe*****

      在宅で妻を看たい、という気持ちはわかるけれどそれで自分が追い詰められて手を上げるくらいならプロの手を積極的に利用した方がいい。どんな覚悟をもって介護にあたった、としても。人ひとりを、期間無期限で、たった一人で看続けていくのは不可能なのだ、と全ての在宅介護の介助者に知っておいて欲しい。介護疲れというよりは、自分の思い通りにならない苛立ちで、奥さん殺めるように読めたから、余計に。覚悟で介護は出来ません。奥さんに殺される理由もありません。正直、執行猶予は納得のいかない量刑だと考えます。自分の感情で一緒にいたいと在宅介護をしていて、便の始末で立腹して手を上げる人には在宅介護という選択は間違いだったと思うんだけどな……。

      南日本新聞

      Posted by jinchangz